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イラク

悲劇の町ハラブジャに母子病院建設へ

イラク北部クルド地域は、フセイン政権時代、さまざまな弾圧の犠牲になってきました。スレイマニア州のハラブジャの町は1988年3月、イラク軍による化学兵器(サリン、VXなどの混合ガス)の攻撃を受け、8万人の人□のうち、約6000人が死亡し、約2万5000人に重い障害が残りました。この地域では、がんの発生率や障害を持って生まれる子どもの割合が高く、乳幼児死亡率も周辺都市を上回っていて、化学兵器の影響が疑われています。にもかかわらず、ハラブジャ地域には出産や新生児医療に関する専門の病院がありませんでした。PWJは、母子病院の建設と、医療スタッフヘの専門研修を行うことになりました。

ハラブジャ母子病院の完成イメージ

ハラブジャ母子病院の完成イメージ

建設予定の母子病院は2階建て50床。手術室、分娩室、新生児室、検査室を備え、X線検査も可能です。ナースステーションや食堂、会議室、事務室などのほか、医療スタッフが遠隔地であるハラブジャでも勤務できるよう、職員住宅も完備します。設計は日本人建築士とイラク人建築士による合同デザインとする計画で、協議が重ねられています。

事業期間は2007年8月から09年10月まで。08年3月にも着工予定です。総事業費は約9億円で、日本のNGOによる海外での建設事業としては、これまでにほとんど例のなかった規模となります。

知っていますか?

「ハラブシマ」−ハラブジャの町で多くの無実の住民が化学兵器の犠牲になった悲劇を、原爆の被害を受けたヒロシマの悲劇と重ねて、クルドの人はこう表現します。広島・長崎への原爆投下だけでなく第二次大戦中、日本の多くの都市が爆撃されたことも広く知られています。そして、この言葉には、戦禍から立ち直り、平和主義のもと、経済的な発展を果たした日本への連帯と尊敬の気持ちも込められています。

村に生きる イラク発

自信を失わずグリーンライン上のファイダ地区で避難生活を送る人びと

かつて実質的な休戦ラインがあったニネベ州ファイダ地区の軍事施設が役割を終えたのは2003年のイラク戦争後。その後、イラク情勢が好転しないなか、多くの避難民がこの地に移り住み、避難生活をするようになった。困難な生活のなかでも彼らは、努力することを放棄せず、自分自身と家族のために責任を果たそうとしている。PWJの職業訓練や収入向上事業に加わったのもそのためだ。

左官の訓練を受ける人たち

左官の訓練を受ける人たち
(C)Peace Winds Japan

モハメドさん(仮名)は2004年、治安が悪化するモスルを離れた。妻と3人の娘とともに、“小部屋”と小さなテントで暮らす。現在はPWJの収入向上事業で小さな商店を営んでいる。

「毎朝、その日払いの仕事を探しにいっても、みつけられるのは10日に1度くらい。残りの日は、ただ、ぶらぶらしているしかなかった。でも今は仕事がある。毎朝、充実した気持ちで起きられる」。“小部屋"を改修して“家”にすることが今の目標だ。

ヘアードレッサーのコースを受講したサメラさん(仮名)も職業訓練を受けて自信を取り戻した。17人の家族が1つの家で暮らしている。美容院で働くようになり、「収入とともに、充実感を得られるようになった」と話す。

現地の状況は、すべての受講者が職を得られるほど甘くはない。左官工のコースを受講したアリさん(仮名)は、PWJの事業で商店4店舗の建設に携わった後、仕事をみつけられない状態が続いている。「家族を支えるために、仕事をみつけたい」。自分で道を切り開きたいのだ。自分の力を生かして。

取り残されてしまった人たちとともに

2007年4月からイラク事業を担当することになり、現地に赴任しました。しかし、治安の関係から、なかなかイラク国内に入ることができず、隣国ヨルダンで調整業務にあたる日も多くなっています。

イラク北部では、インフレが続き、物価の高騰に悩まされています。とくにガソリンはイラク戦争前に比べて、50倍近くにも跳ね上がり、人びとの生活を圧迫しています。

緊急を要する避難民の支援や、開発のギャップのなかで取り残されてしまった人たちの自立支援に、今後も地域の人たちとともに取り組んでいきたいと考えています。

角免昌俊(PWJイラク駐在スタッフ)

※このレポートは「ピースウィンズ ・ニュース」vol.109(2007年11月号)に掲載したものを一部、修正したものです。

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