特集記事

アフガニスタン

サリプル水管理局と協力体制

PWJは現在、現地関係者の能力向上にも取り組み、将来は地元の政府・機関が中心となって観測を続けていく体制をめざしています。その最初の取り組みの一つとして、水・エネルギー省の下部組織にあたるサルプル水管理局と間で2009年4月、互いに協力していくための覚書を締結しました。サリプル川沿いの灌漑マップの作成がすでに始まったほか、水管理局との共同調査なども計画中です。

しかし実際には、覚書の締結前から水管理局との協力体制は築かれてきました。PWJが水調査を行っていること、貯水槽建設などの専門性を持っていることが知られるようになり、「洪水被害の修繕について意見を聞かせてほしい」「湧水の分配方法について調査をしてほしい」などと相談を受けるようになっていました。

現地では、水の管理・分配は伝統的に、村や用水路ごとに配置されている水役人「ミラブ」が担当しています。水不足で村から分配についての要望が出たときにはミラブの会議で議論されます。水管理局との関係からPWJもミラブの会議に参加することもあります。また、厳しい水不足のときには、知事や副知事と協議し、支援について調整を図ってきました。

現地の川の流れ

現地の川の流れ
(C)Peace WInds Japan

縁あって専門の水文調査に〜児島の横顔

大学、大学院で水文学を専攻した児島がインターンとしてPWJに入ったのは2000年8月。応募時の作文に「今後、水の問題は大事だ」とは書いたものの水の支援へのこだわりはなく、「何でもやるつもりだった」。実際、最初の担当業務は、中国の少数民族学校を支援のための食品輸入だった。

PWJに入って半年後の2001年2月、インド西部地震の被災者キャンプで、飲料水に関する支援を行ったのが、児島にとって初めての水支援。アフリカ・シエラレオネに赴任して井戸建設を行うことが決まり、インドから帰国後、3カ月、新潟の井戸掘削会社で井戸掘りの研修を受けた。

2003年2月、初期調査のため、児島は初めてアフガニスタンに入った。「タリバンと同時に干ばつも去った」と住民の表情は明るかった。春先、雪がとけて川となり、辺り一面が緑に覆われた。「聞いていたより水はあるのかもしれない」。しかし、その年がたまたま降水量に恵まれていたことが後にわかった。戻るはずだったシエラレオネには戻らず、観測機器の設置を行い、調査を始めた。

それから6年。大きな課題に取り組みながらも児島は水資源調査の意義をあらためてかみしめている。

「復興のためにデータが必要なことは確かなのに、支援が集中するのは、食糧支援や医療支援などの分野。政府が機能していれば政府間援助で水資源調査が行われることもあるが、政府が十分に機能していない国では一番手薄になる。こうしたすき間をNGOが埋められるのもしれない」

アフガニスタンの第一印象は「農業しかない地域。水をやりくりする方法をみつけるしかない」だった。小麦がまったく収穫できなかった2008年の干ばつも目の当たりにし、その思いはいっそう強くなった。

農業の将来のため絶対必要

アフガニスタンのなかでは北部の治安は比較的落ち着いています。しかし、安全確保の問題は水資源調査の進め方にも影響を与えています。1つは、児島自身が観測機器の確認に行く回数の減少です。現地スタッフだけでもデータ回収はできますが、その場でデータを確認し、機器に不調があればすぐに修理するためには、児島が立ち会う方が確実です。

治安情報の収集にも時間をかけます。国連やNGOのネットワークを通じてメールで届く安全情報や、安全に関するNGOの定期的な会合の内容、地元警察の情報などを分析するほか、町の噂を聞くために現地スタッフを市場に行かせることもあります。

「水調査を行うために安全情報を集めているが、安全確保にかかる時間が長くなってしまう。本末転倒だと思うことさえある」と児島。リスクが高いと判断すれば、事業が遅れがちになっても移動は取りやめます。それでも児島たちPWJ水文チームのスタッフは「河川の水がどれだけあるかを理解することは、農業の将来のために絶対必要だ」と、安全確保を図りながら、調査や分析に明け暮れています。 調査や分析に明け暮れています。

水くみ中に笑いかけてきた少年

水くみ中に笑いかけてきた少年
(C)Peace WInds Japan

体力と優しさで児島を支えるシェラザット

現地スタッフなしではNGOの支援活動は実施できません。児島とともに水文事業を担当する1人がシェラザット。20代半ばで現地スタッフのなかでも若い彼は、先輩たちから「礼儀がなってない」と怒られることもたびたび。それでもサッカーやテコンドーで鍛えた体力とガッツで「ぼくはアスリートだから」とかわしているとか。

PWJ前アフガニスタン駐在スタッフの山元めぐみは「事務所内の観測点で毎朝、毎晩、気温や湿度、風などをきちんと測っていた姿が印象的」。計算力をつけるため児島が毎朝課す百マス計算の小テストにもまじめに取り組んでいます。

そんな彼が将来、アフガニスタンの水資源調査をリードしていくようになるかもしれません。

※このレポートは「ピースウィンズ ・ニュース」vol.115(2009年5月号)に掲載したものを一部、修正したものです。

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